【7月4日 AFP】ミャンマー西部ラカイン(Rakhine)州に設置されたトランジットキャンプでは、バングラデシュからのイスラム系少数民族ロヒンギャ(Rohingya)難民らに対して、1日当たり150人まで対応できるよう体制が整えられている。

 だが、この施設を訪れる人の姿を見るのはまれだ。ミャンマー軍から暴力的に追い出された場所に戻ることを、ロヒンギャの人々は恐れているのだ。一方のミャンマー側にも、ロヒンギャを安心させるための努力をしている様子は見受けられない。「1月に開設してから、彼らを受け入れる準備はできている」と、ンガークラ(Nga Khu Ra)の入国管理責任者ウィン・カイン(Win Khaing)氏は言う。

 昨年8月に軍に弾圧を受け、逃げた70万人のロヒンギャのうち、ラカイン州北部に再定住した人は200人以下にとどまる。ロヒンギャの女性たちは、治安部隊にレイプされたと訴えており、また、処刑、残酷な暴力行為があったと証言する人たちもいる。国連は、ここで行われたのは「民族浄化」だとしている。

 政府は4月、ロヒンギャの1家族5人の到着を大々的に報じた。だが、家族はミャンマーとバングラデシュの緩衝地帯、厳密にいえばミャンマーの国内側から来たことが後になって分かり、単なる宣伝行為だと非難された。それにも関わらず、地元当局は国境近くにその一家の大きな写真を数枚飾り、「帰還の一歩を記録する写真」と宣伝した。

 ミャンマーはここ数か月、バングラデシュから不法に国境を越えてきた多数のロヒンギャについて、帰還させたと主張している。また、船でバングラデシュに逃れようとしたものの、ミャンマーに流されて戻って来てしまった人たちについても、トランジットキャンプを通じて、親族と暮らせるよう帰還しているとした。

 しかしバングラデシュ側は、これらの人々を合法的な帰還者とは見なしていない。

 ミャンマー政府は6月29日、不法に国境を越えて戻り、刑務所に収容された9人のロヒンギャを報道陣の前に登場させた。9人については、5月に釈放ということになっていた。だが、この物語にはすぐにひびが入った。一人はバングラデシュに入ったこともないと言い、また別の人はミャンマー国内の刑務所から「本国に送還」されたと語ったのだ。

「私たちは昨年11月に(ミャンマーで)身柄を拘束され、移民法に反したとしてそれぞれ4年の懲役となった」と、農民で4人の子どもがいるヤー・セイン(35)さんは言う。「私たちはバングラデシュから来たことを非難された。バングラデシュには誰も行ったことがない」