【6月28日 AFP】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(キム・ジョンナム、Kim Jong-Nam)氏が昨年マレーシアで暗殺された事件で、マレーシア検察当局は28日、犯行はいたずらなどではなく、国連(UN)が禁止している毒物を用いて「綿密に計画・実行」された殺人だと主張した。

 正男氏は昨年、クアラルンプール国際空港(Kuala Lumpur International Airport)で、神経剤VXを顔に塗布されて殺害された。

 VXは致死性が非常に高いことから、国連はこれを大量破壊兵器に分類している。

 冷戦(Cold War)時代をほうふつさせ、世界を震撼(しんかん)させたこの事件をめぐっては、インドネシア国籍のシティ・アイシャ(Siti Aishah)被告とベトナム国籍のドアン・ティ・フオン(Doan Thi Huong)被告が殺人罪で起訴されている。

 被告側は、いたずらを仕掛けるテレビ番組に出演すると思い込まされ、北朝鮮工作員らが綿密に練り上げた計画の実行犯に仕立て上げられたと訴えてきたが、検察側はこの主張を否定してきた。

 検察が提出した文書には、「これは殺人が綿密に計画・実行された暗殺」であり、両被告は確実に成功するために「訓練」を受けていたと記されている。さらに、攻撃的な要素が存在し、両被告は攻撃の前後で笑顔を見せていなかったことに言及し、いたずらならあってしかるべき「ユーモアの要素」はなく、「自分たちが何をしているか自覚していた」と指摘した。

 いずれも20代の両被告は殺害を否認しているが、有罪判決が下れば絞首刑に処される。

 昨年始まった裁判は、今年4月初旬以降中断されていたが、27日に公判が再開され、現在は最終弁論が行われている。(c)AFP/M. Jegathesan