【4月24日 AFP】人間は汗をかく、イヌは舌を出して荒く息をする、ネコは自分の体毛をなめる。動物は蒸発によって体温調節をするためにさまざまな興味深い方法を用いてきたが、創意工夫に関しては、オビキンバエの右に出る者はいないだろう。

 この昆虫は体温を下げるために、口から消化液の泡を吹き出し、その泡を吸い込んで体内に戻すことが、このほど発表された研究で明らかになった。

 英科学誌ネイチャー(Nature)系オンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に掲載された論文の共同執筆者で、ブラジル・サンパウロ州立大学(Sao Paulo State University)のデニス・アンドラーデ(Denis Andrade)氏は、「消化液が体外に出るときに蒸発が起き、これによって液体の温度が下がる。ハエはその後、冷却された液滴を体内に戻し、これによって体温を低下させる」と説明している。

 この「泡吹き行動」は「オビキンバエが気化冷却を促進させ、それによって自身の体温を下げるための非常に効果的な方法」とみられると、アンドラーデ氏はAFPの取材に語った。

 オビキンバエは温暖な気候の地域に生息する昆虫で、動物の死骸に卵を産み付けることで知られている。このハエが泡を吹く様子は以前から観察されていたが、それがどのような働きをするかについてはこれまで謎のままだった。

 アンドラーデ氏と研究チームは「泡吹き行動」をしているオビキンバエの体の温度変化を調べるために赤外線サーモグラフィーを使用した。

 論文によると、この赤みがかった色の泡はハエの頭部の半分ほどの大きさまで膨らむ間に急速に冷却され、「約15秒以内に周囲温度を最大で8度下回るまで低下する」という。

「その後、オビキンバエが冷却された液滴を再摂取すると、それによってハエの頭部、胸部、腹部の温度がそれぞれ1.0度、0.5度、0.2度低下」し、この行動を繰り返すことでさらに体温が低下する。

 ハエが吹き出す泡の数は気温の上昇に伴って増加するが、空気中の湿気が蒸発の妨げになるほどの高湿度環境では吹き出す泡の数が減少することを、研究チームは観察した。

 これらの観察結果をまとめると、泡吹き行動が、少なくとも部分的には、体温を調節するために利用されていることの「有力な証拠」となると、アンドラーデ氏は主張している。その他の働きとしては、消化などが考えられるという。

 哺乳類や鳥類にとって発汗や荒い呼吸が有効な冷却方法である一方、ろう状の物質で覆われた硬い外骨格を持つ昆虫にとっては体表面からの蒸発はより困難だ。

 他の昆虫がオビキンバエと同じ方法を用いている可能性もあるが、体のサイズに比べて十分に大きな泡を吹き出すことができるものに限られるだろうと研究チームは指摘している。(c)AFP