【4月20日 AFP】女子代表サッカーチームの結成が、いまだ遠い夢であるスーダン。サルマ・マジディ(Salma al-Majidi)さん(27)は、大好きなサッカーに関われる唯一の方法は指導者になることだと承知していた。そして、選手は全員男性だろうということも。

 マジディさんはアラブ圏でもスーダンでも初めて、男子サッカーチームの指導者を務めることを国際サッカー連盟(FIFA)に認められた女性で、中東・北アフリカ全域で圧倒的な人気を誇るこのスポーツの先駆者だ。

「なぜサッカーか。それは私の初恋で、最愛のものだから」と語るマジディさん。スポーツウエア姿で頭には黒いスカーフを着け、首都ハルツーム(Khartoum)東方にある町ガダーレフ(Gadaref)のサッカークラブ「アル・アハリ・ガダーレフ(Al-Ahly Al-Gadaref)」の練習を指揮する。

 元警官の父を持つマジディさんが、サッカーと恋に落ちたのは16歳の時、弟の学校チームの練習を見たのがきっかけだった。監督の指示、動き、練習で目印のコーンを置く姿に魅了された。

「練習が終わるたび、監督が使っていた指導テクニックについて彼と話し合った」。ある暑い日にガダーレフのほこりっぽいグラウンドで練習する選手たちを見ながら、マジディさんはAFPに語った。「彼は私に指導者の才覚があるとみて、一緒に働く機会をくれた」

 程なくしてマジディさんは、ハルツームとナイル(Nile)川を挟んだ西岸に位置する双子都市、オムドゥルマン(Omdurman)のクラブ「アルヒラル(Al-Hilal)」で13歳以下と16歳以下のチームを指揮することになった。

 マジディさんは、スーダンの男子2部リーグのチーム、アル・ナスル(Al-Nasr)、アル・ナハダ(Al-Nahda)、ナイル・ハルファ(Nile Halfa)、アル・ムラダ(Al-Mourada)の監督を務めた経歴を持ち、英BBCの2015年版「100人の女性」の一人にも選ばれた。

 ナイル・ハルファとアル・ナハダは、マジディさんの指揮の下、地元リーグで優勝を勝ち取ったこともある。現在、彼女はアフリカ大陸のB級ライセンスを保持しており、大陸内のどの1部リーグチームでも監督を務めることが可能だ。

 スーダンに女子サッカーを禁じる法律があるわけではない。だが保守的な社会である上、イスラム教に傾倒している政府によって、女子サッカーの存在は陰に置かれている。結果、スーダンでは女性もサッカーはするものの、女性のクラブや大会は存在せず、女性たちが公の場でプレーすることもあまりない。

 土煙を蹴立てフリーキックの練習をする選手たちの傍ら、国際的なチームの監督を目指すマジディさんはこう語った。「女子サッカーには制約がある。けれど、私は絶対に成功するつもりです」

(c)AFP/Jay Deshmukh and Abdelmoneim Abu Idris Ali