【4月10日 AFP】世界ロードレース選手権(WGP 2018)で通算9度の世界王者に輝いた実績を誇るモビスター・ヤマハ(Movistar Yamaha)のバレンティーノ・ロッシ(Valentino Rossi、イタリア)が、レース中にレプソル・ホンダ(Repsol Honda)のマルク・マルケス(Marc Marquez、スペイン)が接近してくると「恐怖」を感じると認め、同選手が今のような走行を続けるのであればレースが「非常に危険」なものになりかねないと警告している。

 8日に行われたMotoGpクラス第2戦のアルゼンチンGPで、現世界王者のマルケスはコーナーで追い抜きざまにロッシと接触して30秒のペナルティーが科された。このアクシデントで横滑りして転倒した39歳のロッシは「けがは大丈夫だけれど、これは非常に悪い状況だ」と訴えた。

「例として今週末に何が起きたかというと、一つのハプニングとしては誰にでも起こり得ることだ。ブレーキでミスすることもあれば、ほかの選手に接触してしまうこともある。そういうことは当たり前のように起こる。それがレースだ。だけど金曜日(6日)の午前中から、マルケスはこうした行為をマーベリック・ビニャーレス(Maverick Vinales、スペイン)やアンドレア・ドビツィオーゾ(Andrea Dovizioso、イタリア)、そして僕に対して行った。そして、土曜日(7日)から日曜日(8日)には、続けて4人のライダーにもやっていた」

「こんなレースをしていたら競技レベルが非常に危険なものになる。ライダー全員がこんなことをすれば、このスポーツはとても危ないものになり、悪い方向へたどり着いてしまう。これはとても危険な状況だ。レースディレクターのマイク・ウェブ(Mike Webb)氏にも訴えたが、MotoGPとしてもっと責任を担い、何とかしてもらわなければならない」

「マルケスとサーキットにいると恐怖を感じる。今回も彼の名前が見えてきたとき怖かった。自分はレースディレクターではなく、決断を下すのは彼らだ。しかし、マルケスはこのスポーツを破壊している。時速300キロで走行しているときは、ライバルへの配慮が必要だ」

 マルケスはレース終了後、謝罪するためにヤマハ陣営へ向かったものの、ロッシはすでにその場を後にしていたという。ヤマハのチームディレクターを務めるマッシモ・メレガリ(Massimo Meregalli)氏は「バレンティーノはマーベリックの後ろで6位を走行していた。彼のレースはマルケスによってぶち壊された。レースディレクターがマルケスに30秒のペナルティーを科したことは敬意を払うが、彼の危険な走行スタイルは安全面とこのスポーツにとって大きな不安要素になりかねない」と不満をあらわにした。

 一方、マルケスは当日の悪天候に加え、接触によるペナルティーでタイムを挽回しようとしていた際に起きた事故であると弁明しており、「必死でタイムをリカバーしようとしていて、不運にもいくつかミスを犯してしまった。最悪だったのはアレイシ・エスパルガロ(Aleix Espargaro、スペイン)との接触だ。彼よりもスピードが速かったことに気づいていなかったんだ。全力で接触を回避しようとしたけれど、残念ながらできなかった。ペナルティーを受けて、安全のために2つ順位を下げた。1つじゃない。それから再びプッシュを開始した」と話した。

「バレンティーノに関しては話が違う。あれはコースコンディションが原因だ。ウエットパッチ(水たまり)に乗って、フロントがロックしたのでブレーキを離してしまったんだ。曲がり切ろうとした際に、接触を避けようと最大限の努力をした。彼が転倒したときすぐに謝罪した」

「あれは前にヨハン・ザルコ(Johann Zarco、フランス)やダニエル・ペドロサ(Dani Pedrosa、スペイン)、それからダニロ・ペトルッチ(Danilo Petrucci、イタリア)やアレイシに起きたように、レース中のアクシデントだ。一つ確実にいえることは、自分はほかのライダーと故意に接触したことは一度もないということだ」

 当日のレースでは、LCRホンダ(LCR Honda MotoGP)のカル・クラッチロー(Cal Crutchlow、英国)が、モンスター・ヤマハ・テック3(Monster Yamaha Tech3)のヨハン・ザルコ(Johann Zarco、フランス)を0.25秒差でかわして優勝した。(c)AFP