【4月5日 AFP】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(キム・ジョンナム、Kim Jong-Nam)氏が昨年2月、マレーシアで殺害された事件の裁判で、被告側は5日、殺害に用いられたとされる神経剤VXの検査を行った研究所について、化学兵器禁止機関(OPCW)の公認検査施設に含まれていないと指摘した。

 昨年2月13日、クアラルンプール国際空港(Kuala Lumpur International Airport)で発生した冷戦時代を思わせるこの殺害事件をめぐっては、インドネシア国籍のシティ・アイシャ(Siti Aishah)被告とベトナム国籍のドアン・ティ・フオン(Doan Thi Huong)被告に対する裁判が行われている。

 被告の弁護士らは、両被告がいたずらを仕掛けるテレビ番組に出演すると思い込まされ、北朝鮮工作員らが綿密に練り上げた暗殺計画の実行犯に仕立て上げられたと訴えてきた。

 いずれも20代の両被告は、マカオ(Macau)行きの航空機に搭乗しようとしていた正男氏の顔に猛毒の神経剤VXを塗布して殺害する意図はなかったとして無罪を主張しているが、有罪と認められれば絞首刑に処される。

 シャーアラム(Shah Alam)の高等裁判所で開かれた裁判に出廷し、アイシャ被告の弁護士から証言を求められた化学兵器専門家のラジャ・スブラマニアム(Raja Subramaniam)氏は、VXを検査したマレーシアの研究所はOPCWの公認検査施設ではないと認めた。

 OPCWの公認を得るには各研究所は一定の基準を満たす必要で、少なくとも年に1度の技能検定を受けなければならない。今回検査を行った研究所はこの過程を踏んでいなかったものの、スブラマニアム氏によると、この過程は「任意」だという。

 また弁護士によると、OPCWが大量破壊兵器とみなされるVXのサンプルを送るよう要請したにもかかわらず、サンプルはOPCW側に届いていないという。

 この日をもって証人34人が証言し、のべ39日間に及んだ審理は終了。評決までには数か月かかる見通しとなっている。(c)AFP