【2月25日 AFP】平昌冬季五輪のアルペンスキーとスノーボードで金メダルを獲得し、五輪史上初めて競技をまたいでの同一大会2冠を達成したチェコのエステル・レデツカ(Ester Ledecka)が、自分は「クレイジーすぎる」ので参考にはしないでほしいと話した。

 今大会のレデツカは、アルペンスキーの女子スーパー大回転で金メダルを獲得し、五輪史上最大級の衝撃を与えると、24日にはスノーボード女子のパラレル大回転でも優勝。この2冠という快挙には、米スキー界のスターであるリンゼイ・ボン(Lindsey Vonn)とミカエラ・シフリン(Mikaela Shiffrin)も、レデツカが若い世代の刺激になると話している。

 それでもレデツカ本人は、後進に自分を手本にしてほしいかという問いに、「ダメ、やめた方がいい、本当に! 私はあまり参考にならない。クレイジーすぎるから!」と答えている。

「自分がやっていることを楽しんで、そして決断してやってみる勇気がありさえすれば、誰にでも可能性はある。でも、誰もが二つのスポーツをやりたがるわけじゃない」

「私の場合はたまたま見守ってくれる人がたくさんいて、家族も支えてくれる。二つのスポーツをやるのはすごくお金がかかるし、自分のチームにお給料を出せるようになるのにも時間が必要だった。だから、今の状況にはすごく感謝している」

 スノーボードを本職とし、世界選手権も2回制している女王は、アルペンスキーにもエネルギッシュに取り組み、アンナ・ファイト(Anna Veith、オーストリア)との争いを100分の1秒差で制して優勝した。そのことで、レデツカは今やスキーの滑り方にも革命を起こしたという見方が出ているが、本人はそのことを否定している。

「正直、そういう風に思ったことはまったくない。リンゼイは小さいころから、ミカエラの方も彼女がW杯に出始めたときからずっと見ているし、どちらもすごく刺激になる存在。二人のライドが大好きだし、二人のようにうまくなりたいと思っている」

 それでも、レデツカのスキーのコーチは「ライド」という言い方が気に入らないらしく「私たちはライドなんて言わない。普通そこはスキーだろう!」とたしなめている。

 スキーとスノーボードの世界には、別れた恋人にも似た対抗意識のようなものが根強く、スキーヤーは昔から、スノーボーダーを雪山にずかずかと乗り込んできた新参者とみなしている。

 レデツカは、かたわらのスノーボードとスキーのコーチを交互に指差し「こっちのスノーボーダーといるときは『クソスキーヤー!』って言って、反対のコーチといるときは『クソボーダー!』って言うようにしている」と話している。両スポーツのはっきりとした溝を埋める架け橋になるつもりはないようだ。

 レデツカは、自分の「最大の武器」は楽しみ続ける能力だと話している。

「楽しみながら、自分のためにやれている限り、良い方法だし特別なことだと思う。誰もがずっとこんなことをやれるわけじゃない。斜面に立っていさえすれば、私は家にいるような気分になれる」 (c)AFP/Luke PHILLIPS