【3月10日 AFP】何世紀もの間、キルギス人の遊牧民たちは中央アジアと南アジアを自由に行き来してきた。家畜を連れ、川を越え、雪をいただいた山々を歩いた。しかし今日、彼らは険しい山脈と渓谷からなる「世界の屋根」、アフガニスタンのワハン回廊(Wakhan Corridor)で孤立している。そしてここから移動できる望みは少ない。

 政治的混乱や紛争により、遊牧民たちは徐々にこの地に追い込まれてきた。ここには道もなく、周辺の国境は一つずつ閉じられていき、遊牧民たちは先の見通しがつかない生活を強いられている。

「われわれは図らずもアフガン国民になった」と、族長のジョー・ボイ(Jo Boi)さんは語った。まぶたは重たそうで、声に活気はない。「この地を選んだわけではないが、他に行く当てがない」

 研究者らによると、この地の人数はわずか1100人ほど。気候は厳しく、気温が0度を上回ることはまれで、作物を育てることもできない。

 住民の寿命も短い。NGOのクロスリンク・ディベロップメント・インターナショナル(Crosslink Development International)のジェフ・ウォークス(Jeff Walkes)さんによると、女性のうち3人に1人は分娩(ぶんべん)の合併症によって死亡し、生まれた子どもの53%は5歳未満で死亡する。

 医師や診療所は皆無で、軽い病気ですら命取りになる。羊飼いのティロさんは、「生よりも死の方がありふれている」と話した。彼の手肌はひどく荒れていて、ひび割れに血がにじんでいる。ここでよく見られる症状だ。