【10月4日 AFP】内戦によって国内が分裂する困難な状況の中、2018年サッカーW杯ロシア大会(2018 World Cup)のアジア予選を戦ってきたシリア代表は、間もなくオーストラリア代表とのプレーオフに臨む。そこを乗り越えることができれば、代表にとって奇跡のW杯出場が見えてくる。

 アジア予選で好結果を出すのは難しいとみられていたシリアだが、プレーオフに進出し、ついに本大会まであと4試合のところへたどり着いた。

 同国が内戦状態にあるため、マレーシアを「ホーム」として戦っている代表は、5日にマラッカ(Malacca)で、10日にアウェーのシドニー(Sydney)でプレーオフ2試合を戦う。その勝者が、北中米カリブ海予選の4位チームとのこちらもホームアンドアウェー方式の大陸間プレーオフに臨む。現時点では、米国が同地区4位につけている。

 最終予選のシリアは、強豪の韓国とイランから激闘の末に引き分けをもぎ取り、中国とウズベキスタン、カタールから勝利を収めてきた。

 アイマン・アル・ハキーム(Ayman al-Hakim)監督は、選手たちを粘り強い集団に鍛え上げ、現在はそこにゴール前の脅威も加わっている。反体制派への支持を公言して代表を離れていたフィラース・アル・ハティーブ(Firas al-Khatib)、同じく政治的なものとおぼしき理由で長く代表から遠ざかっていたオマル・アル・ソーマ(Omar al-Soma)が復帰したためだ。

 アル・ハキーム監督はAFPに対して「アジアのプレーオフに到達できたのはほとんど奇跡だ。わが国が直面している厳しい状況を考えれば、われわれがこのステージに立つことは誰も予想していなかった」と話した。

「ここへ来られたことが、シリア人が持つ意志の強さ、不可能を成し遂げる力を示している。W杯にたどり着いて夢を実現したい。これはすべてのシリア国民、そして選手とコーチ陣、関係者を問わず、チーム全員の夢だ」

 FIFAランキング75位のシリアにはW杯出場経験がなく、プレーオフに進出できたのも、9月のイラン戦でソーマが終了間際に同点ゴールを決めたからだった。後半ロスタイム3分にカウンターからソーマの2-2に持ち込むゴールが決まると、興奮したテレビの解説者は2分間にわたって快哉(かいさい)を叫び、喜びにむせび泣いた。

 今回のプレーオフでは、シリアは下馬評では不利とみられている。対戦相手のオーストラリアは3大会連続で本大会に出場中で、2006年のドイツ大会(2006 World Cup)ではベスト16入りを果たし、敗れはしたものの優勝したイタリアを苦しめた。

 今回も得失点差で本大会へ自動的に出場できる順位をわずかに逃しただけだが、中盤の要マイル・ジェディナク(Mile Jedinak)を引き続き欠く中、不安定な守備はシリアにも十分に付け入る隙がありそうに見える。

 アル・ハキーム監督は「厳しい試合になる。オーストラリアは強豪だ。有名な選手もいるし、彼らのスタイルはこれまで対戦してきたどのチームとも異なる」とコメントした。

「細かな部分まで分析して対策を練っているところだ。ミスは許されない。強敵だが、われわれも格上との対戦は慣れているし、もはやアウェーゲームに苦手意識はない。サッカーに不可能はないし、これまでも証明してきた。われわれにもオーストラリアを倒すチャンスがあるということをね」 (c)AFP