【9月12日 AFP】台湾・花蓮(Hualien)県の馬太鞍(Matai'an)に日が落ちる頃、村の広場で男性らが輪になって踊っている。皆刺しゅう入りのスカートに羽根のついた頭飾りといういでたちだ。それを若い女性らが、品定めするように見守っている。これは、古くから続く縁結びの儀式の一部だ。

「恋人たちの夜」として知られるこの儀式は、台湾で公認されている16の先住民族のうち、最大のアミ(Ami)人の集落で毎年開かれる豊年祭のフィナーレを飾る。

 豊年祭は通常6~8月の間に、各村が時期をずらして実施する。アミにとって最も規模が大きく重要な祝祭で、馬太鞍ではその締めくくりに、独身女性が結婚相手にふさわしいと思う男性を選び出すこの儀式を執り行う。

 何世紀も続くこの風習は、アミの母権制を反映している。ここでは家計のやりくりをはじめ、大事な決定権を握るのは女性で、男性が妻の家に婿入りする。

 歌って踊る男性らが徐々にそのペースを上げる中、女性は気になる男性の後ろへ回り、男性が肩からぶら下げているカラフルな布袋を引っ張る。女性からのアプローチに男性が応える場合は、カップル成立の証しに男性がその布袋を女性に渡す。

 昔はこの儀式から結婚に至るのが一般的で、今でも交際のきっかけになっているが、都市部に出て働くアミにとっては帰省して旧交を温める機会にもなっている。(c)AFP/Michelle YUN