【7月5日 AFP】米国生まれの子ども向けテレビ教育番組「セサミストリート(Sesame Street)」のアフガニスタン版にこのほど、眼鏡をかけたオレンジ色のマペット「ジーラック(Zeerak)」が登場した。学校教育を受ける姉のマペット「ザリ(Zari)」を尊敬しているというキャラクター設定で、女性の居場所は家庭内だけではないということを示す革新的な役割を担う。

 番組制作者の狙いは、伝統的な民族服シャルワール・カミーズと同国の国旗色で刺しゅうされたベストを着たこの4歳の男の子を通して、子どもたち数百万人とその親に教育の価値を示すことだ。

 ジーラックの姉ザリは昨年、ビッグバード(Big Bird)やエルモ(Elmo)といった世界的に人気のキャラクターに、アフガンマペットとして初めて仲間入りした。今では、セサミストリートのアフガン版「Baghch-e-Simsim、(セサミガーデン)」で大人気のキャラクターとなっている。

 番組を放送するテレビ局トロ(Tolo)のディレクター、マスード・サンジェー(Massood Sanjer)氏は、伝統的に男児により多くを投資する保守的な男女分離社会において、学校へ通う年上の姉を慕い見習う弟マペットを登場させることは、「間接的にそれぞれの姉妹を愛するよう子どもたちに教える」ことになると語った。

「Baghch-e-Simsim」は同国唯一の子ども向けテレビ番組。その影響力は大きく、最近の調査によると、テレビのある家庭の子どもと親の約80%が見ているという。番組についてサンジェー氏は、教育を受けた女性の大切さを幼い子どもたちに伝えることができ、また、よい教育が全ての人にとって有益となることを男児に分かってもらうことができると信じていると語る。

「国家リスクおよび脆弱(ぜいじゃく)性評価センター(National Risk and Vulnerability Assessment Center)」が昨年発表した報告書によると、15~24歳の若者で読み書きができるのは、男性では66%、女性では37%だった。小学校に通うアフガン人は45.5%、中学校では27%にとどまっていた。

 セサミーストリートでは、世界的な番組制作を通じて、いかなる制限も設けずにあらゆるキャラクターを登場させている。米国版では今年初めに自閉症のキャラクターが加わった。また南アフリカ版に登場するマペットはHIVウイルスに感染しているとの設定だ。

 テレビを視聴できる環境にあるアフガニスタン人は全体の約60%にとどまるが、Baghch-e-Simsimのオーディオ版を担当するアンワル・ジャミリ(Anwar Jamilli)氏によると、番組はFMラジオ44局でも放送されているという。さらに番組制作者らが小規模の移動劇場を組織して地方の幼稚園を回っているため、昨年は約2万人の子どもたちが同様のコンテンツを楽しむことができた。(c)AFP/Anne CHAON