【6月16日 AFP】アフガニスタンの旧支配勢力タリバン(Taliban)が拠点としていた同国東部の山岳地帯トラボラ(Tora Bora)を今週、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が奪取したことが分かった。アフガニスタン政府報道官が15日、AFPに明かした。アフガニスタン東部でIS掃討作戦を主導する米軍にとっては手痛い後退だ。

 トラボラは洞窟が数多く点在する山岳地帯で、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)設立者の故ウサマ・ビンラディン(Osama bin Laden)容疑者がかつて潜伏していた場所とされる。2001年末にはビンラディン容疑者を追う米軍が激しい攻撃を加えた。

 米軍はここ数か月、トラボラのあるナンガルハル(Nangarhar)州で、アフガニスタン軍と合同でIS掃討作戦を展開している。4月にはIS拠点付近に非核兵器では史上最大の爆弾とされる大規模爆風爆弾(GBU-43/B Massive Ordnance Air Blast)、通称「MOAB(モアブ)」を投下し、戦略的にも象徴的にも勝利を収めていた。

 しかし、数日に及ぶ激戦の末「トラボラはISの手に落ちた」と、アフガニスタン政府の報道官はAFPに語った。この戦闘で、大勢の地元住民が避難を余儀なくされている。

 トラボラはこれまでタリバンが拠点としていたが、大部分から撤退した模様だ。避難してきた地元部族の男性は、AFPの取材に「ダーイシュ(Daesh、ISのアラビア語名の略称)の戦闘員がトラボラ占領作戦を開始したとき、タリバンは逃げてしまい、われわれは自ら女性や子どもを守るほかなくなった」と語った。

 アフガニスタンでは、2015年にIS系の組織が活動を開始し、着実に勢力を拡大している。ISはナンガルハル州とクナール(Kunar)州の大半を制圧し、タリバンの支配地域にも侵攻しつつある。(c)AFP/Nematullah KARIAB