【5月30日 AFP】タレこみや張り込み、覆面捜査をする民間の捜査員──彼らは、もはや同国が小児性愛者たちの「遊び場」ではないと訴え、取り締まりを強化しているカンボジア警察にとって欠かせない人材だ。

 シエムレアプ(Siem Reap)の売春宿が多い騒々しい一角から離れた薄暗い小道に、タバコをくわえながらオートリキシャ(自動三輪)の運転席に座っているカンボジア人男性がいる。彼の視線の先は、道路の向こう側にあるバーだ。

 彼は乗客を待っているわけではない。メモ帳とカメラを隠し持った張り込み中の民間の捜査員だ。その夜のターゲットは欧米人男性。子どもたちに対する態度が怪しいため、24時間の監視体制が敷かれた。

「容疑者が浮上すれば、人を配置して、怪しい動きがないか監視する」と、民間捜査員のネットワークを管理するミーズ(仮名、38)氏はAFPに語った。

 東南アジアは、子どもに対する性犯罪の世界的な中心地となっている。主な加害者は欧米や地元の観光客だ。

 約70の子ども保護団体が、観光客による子どもへの性的虐待を世界規模で調べ、5月に報告書を発表した。それによると、東南アジアでは対策が功を奏している兆候がいくらかみられるものの、「過去数十年にわたり同地域をむしばんでいる状況は変わっていない」という。

■闘いは続く

 カンボジアが、子どもに対する性犯罪の中心地として世界に悪名をとどろかせたのは2002年。小児性愛犯罪者として英国で有罪判決を受け、カンボジアに移住していた英国の元グラムロック歌手ゲーリー・グリッター(Gary Glitter)受刑者が強制退去処分となった時だ。

 以来、取り締まりは大幅に強化されたが、依然として対策や市民からの情報提供は十分とは言えない状態が続いている。

 ミーズ氏は、小児性愛者を捕らえ、被害者をケアする慈善団体「子どものための活動(Action Pour Les EnfantsAPLE)」の捜査員だ。

 政府の統計によると、グリッター受刑者が強制送還された翌年に逮捕された小児性愛者はわずか8人。最近の詳しいデータは公表されていないが、APLEは昨年、独自の捜査で22人を拘束した。

 性犯罪目的の観光客はテクノロジーを駆使して事前に準備してくるため、技術の進歩は取り締まる側にとって新しい頭痛の種となっている。

 在カンボジアの各国大使館も取り締まりに協力しているが、欧米の大使館に比べて、カンボジアを訪れる観光客が多い日本や中国、韓国の大使館からはほとんど協力を得られていないという。

 危険なエリアとして知られるシエムレアプ公園を歩きながら、遠くのベンチに座った白人男性がカンボジア人の子どもら2人にウクレレの演奏を披露しているのを見たミーズ氏は、「難しい」と一言。「彼はまったく罪のない善人かもしれない。だが、あのような交流に、私たちは目を光らせないといけない」と語り、当局者に連絡を取った。(c)AFP/Jerome TAYLOR