【9月25日 AFP】昨年10月に行われたフォーミュラワン(F1、F1世界選手権)の日本GP(Japan Grand Prix 2014)決勝でクラッシュし、その後亡くなったフランス人ドライバーの故ジュール・ビアンキ(Jules Bianchi)選手の父親であるフィリップ・ビアンキ(Philippe Bianchi)氏が、まだF1を観戦することはできないという苦しい胸中を明かした。

 マルシャ(Marussia F1 Team)に所属していたビアンキ選手は、雨に見舞われ薄暗くなる中で撤去用車両に激しく衝突し、頭部に重傷を負った。そして、9か月間にわたる昏睡状態の末に、今年7月に死去した。

 フィリップ氏は、南仏の自宅で英国放送協会(BBC)の取材に応じ、「おそらく数か月か数年後には、F1を見ることができるでしょう」と語りながら、「しかし、現時点ではつらすぎます」と吐露した。

 F1ドライバーがレース中の事故で命を落としたのは、1994年のサンマリノGP(San Marino Grand Prix)でアイルトン・セナ(Ayrton Senna)氏が事故死して以来だった。

 悲しみに暮れるフィリップ氏は、「ジュールの事故から1年を迎えて、とてもつらい気持ちです」と述べており、これまでもクラッシュの映像を目にすることはできていないという。

「今週は、ビアンキ家にとって明るいものではありません。家族、ファン、そして彼の友人は皆、ジュールがいなくて本当に寂しく、つらい思いをしています」

 24日の鈴鹿サーキット(Suzuka Circuit)では、マルシャのガレージに近いピットレーンに花やカードが置かれていたほか、事故が起きたコーナーに隣接する観客席ではビアンキ選手へ哀悼の意をささげるバナーが目を引いていた。

 国際自動車連盟(FIA)による事故調査報告書では、特定の事故原因は判明しなかったものの、ビアンキ選手はイエローフラッグの最中に「減速が不十分で制御不能を回避できなかった」と結論づけている。

 当時25歳のビアンキ選手は、コースを外れると、エイドリアン・スーティル(Adrian Sutil)のマシンを安全地帯に運ぼうとした撤去車両に衝突した。

 スピードが事故原因かという質問に対して、フィリップ氏は、「そうかもしれません。ですが私には、速度が速すぎたという見解に違和感があります。彼はF1ドライバーなのですから」と答えている。

 フィリップ氏はまた、「現在も事故の映像は見たくないので、何が起きたのか分からない」とし、「ジュールがクラッシュした映像を見ることはできません。事故のビデオを見ることは私にとってつらすぎますから、衝突に関して何か言うことは不可能です」と続けた。(c)AFP