【7月1日 Relaxnews】これまでは予算の都合であきらめていた自然愛好家たちにとって、北大西洋の真ん中に浮かぶポルトガル領アゾレス(Azores)諸島を訪れることは、もはや夢ではなくなった。同諸島には今年3月に格安航空会社(LCC)が就航。多くの旅行者が訪れるようになった島々には、緑豊かな森や湖、火山の火口があり、ホエールウオッチング・スポットへの小旅行も楽しむことができる。

 25万人が暮らすアゾレス諸島の首府ポンタ・デルガダ(Ponta Delgada)の空港に今年4月以降に降り立った観光客の数は前年同期比33.6%増。ホテルの売上高も35.2%増加した。

 イタリアから旅行で訪れたパメラ・マッシ(Pamela Massi)さん(33)は「アゾレス諸島に来ることをずっと夢見てきた。友人が新しい格安航空便について教えてくれたので、わずか100ユーロ(約1万3600円)でここに来ることができました」と語った。マッシさんは透明な青い海の中を泳ぐイルカの群れがスピードボートの船首で戯れるのを見て感動したという。

 アゾレス諸島で海の観光を手掛ける旅行会社フューチュリスモ(Futurismo)にとって観光客の流入は喜ばしい。クジラやイルカ、カメのウオッチングをするために1日最大250人を海へ連れ出している。しかし「この辺りが一大観光地になればいいと思っている人はいない。制限事項を決めてそれを守っていくのが大きな課題だ」という。地元住民が環境に優しい観光業を維持しようと誓っても、観光客が押し寄せれば自然環境が脅威にさらされる恐れがある。

 現在、アゾレス諸島全体にあるホテルの総ベッド数は1万床。承認待ちの新規投資プロジェクト20件が完成すれば、さらに1800床増える。現地の指導者たちはベッド数の上限を1万5000床に設定している。

 サン・ミゲル(Sao Miguel)島北部沿岸で「サンタバーバラ・エコビーチリゾート(Santa Barbara Eco-Beach Resort)」を経営するジョアン・レイス(Joao Reis)さん(37)は、200万ユーロ(約2億7000万円)を投じ、丘の斜面に15棟の別荘を建てた。使用した資材はコルクや玄武岩、地元の材木など、95%が再利用可能な素材だ。

 このリゾートを「周囲の環境を破壊する従来のホテルに代わる持続可能なリゾート」だと言うポルトガル本土出身のレイスさんは、観光客は今後数年で2~3倍になるだろうがアゾレス諸島はハイカーやサーファー、ダイバーたち向けのニッチなマーケットであり続けるだろうと考えている。(c)Relaxnews/AFPBB News