【10月6日 AFP】米国内で初めてエボラ出血熱と診断された男性がウイルスに感染した経緯は、男性の祖国リベリアが抱える複数の問題点を浮き彫りにした。貧困、患者でパンク状態となった医療現場、政府の対応の遅れによって、同国のエボラ危機は深刻化の一途をたどっている。

 先月28日に米テキサス(Texas)州ダラス(Dallas)に入院したトーマス・エリック・ダンカン(Thomas Eric Duncan)さんは、アフリカ以外で初めてエボラ熱発症が確認された事例となった。感染源は、渡米直前にリベリアで滞在していた家の家主の娘、マーサリン・ウィリアムズ(Marthalyn Williams)さんだった。

 家族の話によると、ウィリアムズさんは、ダンカンさんが米国行きの航空機に乗る直前、母親に付き添われ、自宅のある首都モンロビア(Monrovia)郊外ペインズビル(Paynesville)の診療所へ行った。しかし、妊婦だったことから、もっと大きな病院で診察を受けるべきだと診断された。

 ウィリアムズさんは、医師らが呼んだタクシーに、両親と兄弟の家族3人とダンカンさんと同乗した。だが、町中を探し回っても受け入れてくれる病院は見つからず、結局一行は自宅へと戻った。

 ウィリアムズさんはその後、死亡した。リベリア当局によれば、ウィリアムズさんを感染源として4人がエボラ熱に感染し死亡。両親も感染し、エボラ患者用の医療施設で治療を受けている。

 こうした話はリベリアでは決して珍しくない。今回のエボラ熱では、世界保健機関(World Health OrganizationWHO)の最新の統計でこれまでに3439人が命を落としたが、中でも最大の被害が出ているリベリアの死者数は2069人に上っている。家族が助け合った結果、一家全滅に至った例も複数出ている。