【9月26日AFP】(一部更新)地中海のキプロス沖で25日、遭難しかけていたシリア難民ら345人がクルーズ客船に救助された。難民たちは、寄港地のキプロス・リマソル(Limassol)港での下船を拒否し、イタリア行きを要求しているという。

 キプロス当局によると、難民の多くは女性と子供で、キプロス沖50カイリ(約93キロ)付近の海域で悪天候のなか遭難しかけていたトロール漁船から、ギリシャ・シロス(Syros)島からリマソルに向かっていたクルーズ船会社サラミス・クルーズ・ライナー(Salamis Cruise Lines)の運航する客船に救助された。

 リマソルの警察当局とクルーズ船会社によると、客船の乗客700人は既に下船したが、難民のうち下船したのは65人のみで、残りは下船を拒否。客船は次の目的地に出航できずにいるという。同船にはイスラエル・ハイファ(Haifa)へ向かうロシア人300人が乗船していたが、旅程をキャンセルしたという。

 サラミス・クルーズ・ライナーのキキス・バシリウ(Kikis Vassiliou)社長は「残念なことに、難民たちは交渉したがっている。われわれにイタリアへ送ってほしいと言っている」と、記者団に語った。「われわれは彼らを救助し、食事を提供し、精いっぱいの支援をしたのに、彼らはわが社を潰そうとしている」

 同社長は数百ユーロ相当の損害についても懸念を示し、「交渉に責任を負う者も、この状況について説明責任を持つ者もいない」と嘆いている。

 客船に乗り合わせた女性(66)は、難民の1人から聞いた話として、シリアを出航し3日間航行したところで、漁船の船長が難民たちを置き去りにしてどこかへ行ってしまったと語った。船長は、海上から電話をかけた後、現れた高速艇に乗り込み去ってしまったという。

 この女性によると、難民の中には妊娠中の女性が多くおり、乳児も20人いたという。(c)AFP