【7月29日 AFP】中央アフリカで起きた血みどろの紛争は、アフリカ大陸各地で宗教間の対立が起きていることを反映して、イスラム教徒とキリスト教徒の戦いだと捉えられがちだ。

 しかし専門家たちは、この紛争の真の原因は、民族や階級間の闘争、そして腐敗した政治のせいだと分析する。チャドやスーダンから移住してきて成功を収めたイスラム教徒の貿易商たちへの嫉妬、パワーポリティクス、さらには中央アフリカが奴隷貿易の主要な中継地点だった頃から続く緊張が、すべて絡み合って現在の紛争につながっていると専門家たちは指摘する。

 中央アフリカ福音教会連盟のニコラ・ゲレコヤム・ガングー(Nicolas Guerekoyame Gangou)代表は、「彼らは若者を操って殺人をさせている。失った権力を取り戻したいからだ」と言う。「キリスト教徒とイスラム教徒はずっと一緒に暮らしてきた。だが戦争をあおるような政治家たちの発言から、紛争が起きる前から私たち宗教指導者たちは戦争の足音を感じていた。背後で糸を引き、宗教対立のように見せかけているのは政治家たちだ」

 今回の紛争は2013年3月、主にイスラム教徒からなる武装勢力連合「セレカ(Seleka)」が首都バンギ(Bangui)を制圧し、フランソワ・ボジゼ(Francois Bozize)大統領(当時)を失脚させたことが始まりだ。これに対し、キリスト教徒を中心としたボジゼ氏支持派の「反バラカ(anti-balaka)」と呼ばれる民兵組織が台頭し、イスラム教徒に復讐。以降、双方が虐殺、レイプ、略奪と血みどろの報復合戦を繰り広げた。

 セレカはおおむね中央アフリカの北部と東部の出身者と、隣国のスーダンとチャドからやって来た主にイスラム教徒の戦闘員から構成されている。一方の反バラカは、主にボジゼ氏の出身部族で、中央アフリカの中部と南部出身のムバヤ(Mbaya)人から構成されている。

 しかしセレカ、反バラカのいずれも、お守りや魔除けを使うなど精霊信仰が強く、専門家たちはお互いの憎悪は宗教ではなくもっと何か深いものに根差していると考えている。