【5月16日 AFP】スーダンの判事は15日、キリスト教徒の女性に対し、背教行為を犯したとして絞首刑を言い渡した。英国はこの判決を「野蛮」だと非難している。

 この女性の父親はイスラム教徒で、同国で1983年に施行された、改宗者は死刑に処すと定めたイスラム法(シャリア)に基づいて有罪が言い渡された。

 人権活動家らによると、この女性はメリアム・ヤヒア・イブラヒム・イシャグ(Meriam Yahia Ibrahim Ishag)さん(26)で、キリスト教徒と結婚しており妊娠8か月だという。

 アッバス・モハメド・ハリファ(Abbas Mohammed Al-Khalifa)判事はイシャグさんに対し、「改宗するよう3日待ったが、イスラム教徒には戻らないと主張した。よって絞首刑に処する」と言い渡した。

 さらに同判事は、「姦通罪」でイシャグさんにむち打ち100回の刑も科した。同国のシャリア解釈によると、イスラム教徒の女性がイスラム教徒以外の男性と結婚すれば姦通に当たるとみなされる。

 この死刑判決について、「本当にがくぜんとしている」と語った英外務省のマーク・シモンズ(Mark Simmonds)アフリカ担当政務官は声明で、「この野蛮な有罪判決は、スーダンの裁判所の慣行と同国に課された国際人権保護義務との間に厳然とある隔たりを明示するものだ」と述べた。

 多数のキリスト教徒が居住する首都ハルツーム(Khartoum)のハジ・ユセフ(Haj Yousef)地区の裁判所に、伝統衣装を着用し頭部を覆った姿で出廷したイシャグさんは、この判決を無表情に受け止めた。

 審理に先立ち、柵付きの被告席に座ったイシャグさんの改心を促そうと、イスラム教の指導者が約30分にわたって諭した。しかしイシャグさんは穏やかな口調で、「私はキリスト教徒です、背教行為を犯したことはありません」と述べた。

 スーダン政府はイスラム系とはいえ、シャリアの下でむち打ち以外の厳罰が科されるのはまれ。英国に拠点を置き信教の自由を訴える「世界キリスト教連帯(Christian Solidarity Worldwide)」によると、イシャグさんの死刑が執行されれば、1991年施行の刑法に基づく背教罪での最初の処刑となるとしている。

 イシャグさんの弁護士の1人はAFPの取材に対し、今回の判決が覆されるまで同国の最高憲法裁判所まで上訴していく構えを示した。被告側は、背教行為を禁じる刑法の規定が憲法に違反すると考えているという。(c)AFP/Abdelmoneim ABU IDRIS ALI