【4月20日 AFP】「最後の理想郷」として知られるヒマラヤの秘境、ブータン。隔週発行のオンライン紙「ブータニーズ(Bhutanese)」の編集者テンジン・ラムサン(Tenzing Lamsang)さんは首都ティンプー(Thimpu)のオフィスで、携帯電話技術の劇的な影響について考えをめぐらせながら語る。「ブータンは封建時代から現代へ飛躍している。工業化の過程を飛び越えてしまった」

 世界で最後にテレビが導入された国、発展の指標として「国民総幸福量」(Gross National HappinessGNH)を採用している国といったイメージが強いブータンには、携帯電話技術を拒むことが期待されていたのかもしれない。だが、携帯普及のスピードは速い。

 ブータンの人口は75万人で、その大半は地方部に住んでいる。しかし、2つの携帯電話会社の加入者は55万人に上っている。2012年の公式統計によると、12万人超が何らかの携帯電話回線を通じたインターネット契約を結んでいる。電気の世帯普及率は、テレビ放送が開始された1999年の時点で25%以下だったが、その後の水力発電への大規模な投資で現在はほぼ100%となっている。

 国民の生活様式の急激な変化は、政治体制の劇的な変化と重なっている。2008年に絶対王政から立憲君主制に移行し、初の民主的な選挙が行われた。13年には2度目の国民議会(下院)選が行われ、官僚出身でカリスマ性のあるツェリン・トブゲイ(Tshering Tobgay)氏が首相に就任した。