【1月17日 AFP】国連(UN)は16日、イスラム教徒とキリスト教徒の宗教間対立が深刻化している中央アフリカ情勢について、ジェノサイド(大量虐殺)に発展する恐れがあると警鐘を鳴らした。

 同国では、反体制勢力の指導者から大統領に転じたミシェル・ジョトディア(Michel Djotodia)暫定大統領が辞任し、暫定議会に相当する国家移行評議会(CNT)が新大統領を20日に選出する準備に着手しているが、国内では暴力行為が治まらずにいる。

 こうした中、中央アフリカを5日間にわたって訪問した国連人道問題調整事務所(OCHA)のジョン・ギング(John Ging)氏は16日、スイス・ジュネーブ(Geneva)で記者会見し、中央アフリカ情勢には「ルワンダやボスニアなどで見られたあらゆる要素が備わっている。ジェノサイドの要素があることに疑いはない」と警告。残虐行為が日常化し、全国民に恐怖がまん延していると訴えた。

 中央アフリカでは、昨年3月にイスラム教系の武装勢力連合「セレカ(Seleka)」がクーデターで政権を掌握した後、宗教間の衝突が激化し混乱が広がっている。米仏や中央アフリカ支援国際ミッション(MISCA)参加国の部隊が治安回復に努めているが、フランス軍が展開する北部の首都バンギ(Bangui)では緊張が高まっており、巡回中の仏軍兵士が市民に発砲したとの苦情も住民から出ている。

 恐慌状態に陥ったイスラム系住民たちは、隣国チャドに脱出しようと北部の国境に殺到している。現地で取材するAFP記者も、避難民を乗せMISCAに参加するチャド軍に護衛された大型トラック数十台を目撃した。

 ギング氏は、「この国(中央アフリカ)は政治的に崩壊している。公共サービスも、医療から教育、社会福祉まで何もかもが破綻状態だ」と指摘。現状では、長く共存してきたイスラム教系とキリスト教系の住民同士の衝突は宗教間紛争にまで至ってはいないが、「その可能性はある」と警告した。

 国連によると、中央アフリカでは殺りくやレイプ、略奪行為が横行し、人口約460万人の約2割が国内避難民や難民となっている。(c)AFP/Cecile FEUILLATRE、Christian PANIKA