【5月27日 AFP】アフリカ連合(AU)加盟各国の首脳は25日、エチオピアの首都アディスアベバ(Addis Ababa)に集い、前身のアフリカ統一機構(OAU)の発足50周年を祝う記念式典が開催された。

 議長国エチオピアのハイレマリアム・デザレン(Hailemariam Desalegn)首相は記念式典のはじめに「貧困や紛争のない大陸、市民が中程度の収入を享受できるアフリカを作ろう」と呼び掛けた。

■急速に成長する経済、増える外国投資

 現在のAU(53か国と西サハラが加盟)は、アフリカ大陸全土が次々と植民地支配から独立を果たしていた最中の1963年に創設されたOAUを引き継いだものだ。アフリカは今でも世界で最も貧しく、最も紛争の多い大陸だ。しかし保健衛生や教育、乳幼児死亡率、経済成長、民主化度といった開発指標は、この50年間で着実に向上してきた。国際通貨基金(IMF)によれば、世界で最も急速に成長している経済が集中するのもアフリカで、近年は巨額の外国投資を引き付けている。

 50周年の式典には国連(UN)の潘基文(パン・キムン、Ban Ki-moon)事務総長をはじめ、フランスのフランソワ・オランド(Francois Hollande)大統領、米国のジョン・ケリー(John Kerry)国務長官、ブラジルのジルマ・ルセフ(Dilma Rousseff)大統領らと並び、中国の汪洋(Wang Yang)副首相も出席した。高位の中国閣僚の出席は、アフリカ大陸における中国の存在感が増していることを示唆している。またブラジルは25日、関係強化のためのより広い戦略の一環として、アフリカ12か国が負っている債務総額9億ドル(約900億円)を帳消しにすると発表した。

■紛争による荒廃、テロリズムの台頭

 ただ現状では、国連の人間開発指数の下位25か国中24か国はアフリカの国で、さらにその何か国かは紛争などにより荒廃している。オランド仏大統領は昨年12月、パリ(Paris)に各国首脳を招いて開催した安全保障会議で、アフリカ大陸が直面している「テロリズムの惨劇」に危機感を表明した。

 50周年の祝賀によって汎アフリカ主義が推進され、分断されがちな大陸を一つにすると語る指導者たちは、ホールに鳴り響くジャマイカのレゲエ・シンガー、ピーター・トッシュ(Peter Tosh)のヒット曲の「あなたはアフリカ人」というフレーズにリズムとともにうなづく。AUの執行機関にあたるAU委員会(AU Commission)のヌコサザナ・ドラミニ・ズマ(Nkosazana Dlamini Zuma)委員長は「私たちがアフリカ問題に対するアフリカの解決策を語るのは、それは(アフリカ全体が)一致団結して行動することでしか、永遠に銃を黙らせることはできないと分かっているからだ」と言う。しかし中国が全額を負担して昨年完成したAU本部ビルでの演説でズマ氏は「私たちの(国の)創始者たちが語っていた自立や経済的独立はいまだつかめず、社会的不平等も残っている」とも指摘した。

 満員のホールで打楽器奏者やダンサー、ミュージシャンらが歌と踊りに乗せて、アフリカの歴史を語ったが、その壮大なプログラムは6時間ずれ込み、米国の新しい外交トップとしてアフリカを訪れたケリー米国務長官のスピーチは、後に開催されたの私的な夕食会での短い挨拶に変わってしまった。そのケリー氏は「過去半世紀にわたるアフリカ連合の進歩の遺産は、今後50年の可能性を思わせる、非常に心躍るものだ。今日のアフリカにおける戦争や衝突は、自由や発展よりもまれで、強権政治は複数政党による民主主義よりもまれだ」と述べた。

 国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)と繋がりのあるイスラム過激派とのソマリアでの戦いなど、近年の紛争地域におけるAUの活動は、たとえその作戦遂行のための資金が欧米の支援を柱としながらも、具体的な行動でその役割を果たしてきた。

 しかし一方では、2011年のリビア内戦で故ムアマル・カダフィ(Moamer Kadhafi)大佐支持か、反体制派支持かでAU加盟国が割れた際、その対立により亀裂が生じ、大陸全体に及ぶ影響力の欠如が露呈した。(c)AFP/Jenny VAUGHAN