【8月13日 AFP】1970年代、旧ポル・ポト(Pol Pot)政権下のカンボジアでの共産党勢力クメールルージュ(Khmer Rouge)による大量虐殺犠牲者らの顔写真1200枚が新たに見つかった。

 カンボジア資料センター(Documentation Centre of CambodiaDC-CAM)のヨク・チャン(Youk Chhang)所長が9日、説明したところによると、パスポート写真サイズの大量の顔写真は首都プノンペン(Phnom Penh)郊外にあった悪名高いトゥールスレン(Tuol Sleng)収容所(別名S-21)に収容された人々のもので、収容者の消息を知りたいと願う家族らに新たな希望となる。

 トゥールスレンに収容された1万5000人あまりのうち、生き延びられたのは、ほんの一握りしかいない。現在、同収容所は虐殺博物館になっており、処刑される運命にあった収容者らの白黒の顔写真数百枚が展示されている。

 新たに見つかった顔写真については、裏に氏名や逮捕された状況など写真の人物に関する情報が手書きされたものが多く含まれており、その点はこれまでの物と大きく異なっている。

 ヨク・チャン所長は、高齢の僧侶やおびえた表情の少年の写真を指差し、「どの写真も語りかけてくる」と語った。

 ヨク・チャン所長によると、これらの写真は、カンボジア北西部でクメールルージュの虐殺犠牲者のものとみられる集団墓地が見つかったとのニュースを知ったある女性が、資料センターに寄付したものだ。

 この女性は、国連暫定統治下のカンボジアで制憲議会選挙に向け準備が進められていた1992年に、平和と和解の名目でクメールルージュ関連の文書が破棄されることを危惧し、写真を政府庁舎から持ち出したという。

 ヨク・チャン所長によれば、この女性の父親もトゥールスレンに収容された後、行方が分からなくなっている。顔写真のなかに父親のものが含まれているのかを確かめたい気持ちがある一方で、まだ写真を見る勇気がないのだという。それでも、これらの顔写真は生き別れた家族の消息を求める多くのカンボジア人の助けになると、ヨク・チャン所長は説明した。

 共産主義というユートピア思想を掲げたポル・ポト政権下では、飢え、強制労働、処刑などで200万人が死亡した。また数十万人が家族と生き別れとなったままで、現在でも家族の行方を探しているカンボジア人は少なくない。

 カンボジア資料センターでは、新たに見つかった顔写真をトゥールスレン虐殺博物館に寄贈するとともに、ウェブサイトにも掲載する計画だ。(c)AFP