【10月17日 AFP】ブータンでは男性が数人の姉妹を妻にする一夫多妻や、女性が数人の兄弟を夫にする一妻多夫が続いてきたが、王国が近代化するにつれてこの複婚制はなくなりつつある。前週のロイヤル・ウエディングも同制度の終わりを示唆する出来事の1つとなった。

 31歳のジグミ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク(Jigme Khesar Namgyel Wangchuck)国王は13日、民間出身の航空機パイロットの娘、ジェツン・ペマ(Jetsun Pema)さん(21)と、古都プナカ(Punakha)で仏教式の華やかな結婚式を挙げた。

 ワンチュク国王は5月の結婚発表の際、ペマさんが唯一の妻になると明言した。ワンチュク国王の父が1979年に4人姉妹と同時に結婚式を挙げたのとは大きく異なる発表だった。

 1907年に始まったワンチュク朝には、現国王の前に4人の国王がいたが、そのうち3人は複数の女性を妻としていた。

■消えゆく伝統社会

 複婚制はブータンの伝統的な社会構造に根ざしたものだった。ブータンの専門家、フランソワーズ・ポマレ(Francoise Pommaret)氏は、「姉妹たちとの複婚は同国中部と東部で多く、兄弟との複婚は主に北部でみられる。これにより、財産を1つの家族の中に集めておくことができた」と語る。

 複婚が減少しているのは、ブータンで考え方が変わったためだ。インドと中国にはさまれたヒマラヤの小国ブータンは、過去数世紀にわたり、外部の影響を拒絶してきた。1999年まではテレビが禁止されていたし、今も観光客の訪問者数は制限されている。

 だがテレビとインターネットが普及し、留学が身近になったことから、若者たちは、地元文化の特に奇異な部分に対して背を向け始めている。

 シンクタンク「ブータン研究センター(Centre for Bhutan Studies)」の研究員ダショー・カルマ・ウラ(Dasho Karma Ura)氏は、複婚制がいまだに残っているのは、ヒマラヤ山脈で1年の大半を過ごす遊牧民たちの間くらい、と述べる。

■婚約者発表に頬を染める国王

  「現国王は現代社会に根ざしている。彼は議会への演説を通じて国民に対し、死が2人を分かつまで人生を捧げあうことを誓った」と、ウラ氏は語った。

 ポマレ氏は、夫婦に対する考えが変わったのは、テレビで放送されるメロドラマが原因だと述べる。「実用上の判断が、ロマンティックな愛という考えに敗れた。国王がその見本」とポマレ氏は述べ、「議会で婚約者の名前を発表するときに、国王の顔が赤くなっていたのを見たでしょう」と指摘した。(c)AFP/Beatrice Le Bohec

【関連記事】

ヒマラヤの王国ブータン、チベット仏教のロイヤル・ウエディング
ブータンのロイヤル・ウエディング、祝賀行事でキスも披露
近代化するブータン、男根像に「羞恥心」感じ始めた市民たち