【7月20日 AFP】空調関連商品を手がける空調服(Kuchofuku)がこのほど、エアコンの機能を持つ電動ファン付きジャケットの販売を始めたところ、福島第1原発の事故に伴う真夏の節電対策として好調な売れ行きを見せている。

 このジャケットは、身頃の左右に1つずつ風を送り込むファンが付いている。最大で毎秒20リットルの風が、ジャケットの内部を循環して袖口やえりを通り抜けていく。こうして汗を乾かし体温を下げるという仕組みだ。ファンの回転速度を変えることで、送風量をコントロールできるが、服の中に空気を送り込むため、空調服を着ると上半身がふくれあがったように見える。

 それでも、何より涼しさを求める人々にとって、ファッション性は問題ではないようだ。

 空調服の本社を訪れた工事現場で働いているという33歳の男性は、「炎天下でも長袖を着なければいけないんです。これで涼しくなるし、熱中症も防止できる」と、ファン付き空調服を買い求めていった。

■逆転の発想で大ヒット

 空調服のファンは、制御ボックスに収納されたリチウム電池で作動し、1回の充電で11時間の使用が可能だ。エアコンの使用電力と比べて、わずかな電力で涼しくなれるというわけだ。

 市ヶ谷弘司(Hiroshi Ichigaya)社長によれば、普通は暑さをしのぐために薄着になろうとするが、空調服は「着れば着るほど涼しくなれる」という逆転の発想に基づいている。

 初代の空調服が開発されたのは2004年で、当時は工場や工事現場での需要が主だった。現在では、大手自動車企業や鉄鋼会社から食品、工事会社まで、作業員に空調服を導入している企業は実に1000社近くに上るが、最近ではオフィスで働く会社員や主婦などからも注文が舞い込んでくるという。

 基本的な空調服の価格は1万1000円前後。付加機能によって値段は異なる。

 空調服では、このほかにも空調ざぶとんや空調ベッドなど、重量を支えながら空気を循環させる特許技術のプラスチック・メッシュ・システムを活かした多彩な商品を取り揃えている。

 こうした製品が、福島第1原発の事故による電力不足に備えて、政府が東京電力と東北電力管内の企業に15%の節電を要請した頃から、売上げが爆発的に伸びだしたという。

 エアコンの設定温度を高める代わりに涼しげな服装での勤務を奨励する「スーパークールビズ」や節電運転の要請も、涼しくなれる商品の売上げを後押ししたようだ。(c)AFP/Miwa Suzuki