【7月8日 AFP】ナイル川の岸辺に近い青々とした自分の畑で、マームーンさん(50)は、なかなか儲けにならないとため息をついた。河畔に広がる肥沃な土地の将来性は高く、政府が農業に大きな期待を寄せているのに、だ。

 スーダンは外貨収入の90%以上を石油収入に頼ってきた。だが、同国の油田の約75%を抱える南部が9日に「南スーダン」として独立するのを機に、石油収入の激減が予想されている。厳しい財政運営を迫られる政府が経済の多様化を模索する中、1990年代後半に石油の輸出が始まるまで国の経済を支えていた農業に、大きな望みが託されている。

 しかし、白ナイルと青ナイルのふたつの河川に挟まれ、綿花や小麦などを栽培している84万ヘクタールもの穀倉地帯、ゲジラ(Gezira)地区では農民たちが不満顔だ。政府は農業革命と称して、世界最大規模の灌漑計画、その名も「ゲジラ計画」を大々的に掲げているが、農民たちは、農業革命の片鱗も見えないと口にする。

 前述のマームーンさんは「農業の状況は10年前よりも悪いよ。物価は3倍に跳ね上がったし、生産高を上げるための研究も、政府の販売戦略もないんだから」と話した。この冬にトラック12台分のトマトが売れたものの、価格の下落や生産コストの高騰、政府の助成の欠如により、純利益はわずか200スーダンポンド(約5000円)だったと嘆いた。

 スーダン政府は現在、農業部門に新しい命を吹き込み、収量を上げるため、将来的な食糧安全保障に不安を抱いている近隣アラブ諸国を中心に、外国からの投資を呼び込もうと躍起になっている。現在エジプトが興味を示しており、ゲジラ地区などに投資することが見込まれているという。

■農民たちのデモも発生

 ゲジラ計画の責任者は、収量が「非常に少ない」ことは認めたが、それは収量アップに不可欠な肥料や農機具を輸入に頼っており、高価で農民が手が届かないためだと説明した。だが、汚職や管理ミスが一番の原因だという指摘もある。

 農民たちは最近、彼らの土地を買い上げようとして不当に安い値段を提示した政府に反発し、抗議デモを行った。一部では警官隊との衝突も発生した。

 ゲジラで尊敬を集めるスーフィーの導師は、政府がスーダンの農業全体を破たんさせようとしていると厳しく非難した。「スーダンは農業の国だが、多くの農民が飢えている。耕すことができず、水路には水がなく、政府がすべてのトラクターを売却してしまったからだ。農民たちには金がない。イスラム教は友愛、平等、自由、正義を求めているが、そういったものは今やすべて失われてしまった」 (c)AFP/Simon Martelli