【6月7日 AFP】孫が夜中に鼻血を出したことが事の発端だった。この凶兆に腹を立てた両親は、祖母にあたるカントゥカコ・スパウンヨロ(Kanthukako Supaunyolo、82)さんが息子にまじないをかけたと決めつけ、警察に通報した。

「なぜ自分の孫にまじないをかけなければならないの?」と訴え続けたスパウンヨロさんだったが、高齢の友人2人とともにまじないをかけた罪で有罪となり、それぞれ33ドル(約2600円)の罰金刑を言い渡された。ただし、マラウイの人口の62%がそうであるように、1日2ドル(約160円)以下で生活している彼女たちにとっては、目の飛び出るような金額だ。罰金刑が払えない3人は、代わりに首都リロングウェ(Lilongwe)の悪名高い刑務所に収監されてしまった。

 これを知った地元の人権団体は、罰金を立て替えて3人を救いだした。スパウンヨロさんの72歳の友人は、「マラウイでは年寄りは嫌われるんです。年寄りはみんな、まじない師に違いないと思われているんです」と話した。

■根強く残る迷信

 英国の植民地だったこの国では、まじないに対する迷信が今なお根強く残っている。不可解な死、エイズ感染の拡大、干ばつ――あらゆることがまじないのせいだと広く信じられている。

 そんな中、まじない師であるとの理由で差別を受けた人々を守るための人権団体「Association for Secular Humanism(ASH)」が昨年結成された。同団体によると、現在、まじない師であると決めつけられて刑務所に収容されている人は50人程度にのぼっており、最大で6年の刑に服している。まじないを行ったという理由で逮捕され、有罪になる人はこのところ増加傾向にあるという。

 団体によると、子どもにまじないをかけたとしておい(62)とともに有罪になった女性(83)が、3年の刑期を終えて出所したものの、社会から受け入れられずに生活が困窮したという事例があった。そのため食糧と生活資金を援助したという。団体の責任者は、「(まじない師の烙印を押された出所者は)高齢で、病気がちで、治療も早急に必要とされている。社会から拒絶された彼らは絶望的な状況に陥っている」と話した。

■本来は「訴える行為が違法」

 まじないを違法とする根拠となっているのが、1911年に英国植民地時代にできた法律だ。ただしこの法律は、誰かをまじない師だと決めつける行為、または誰かがまじないをかけたと決めつける行為を違法だと明記している。しかし、まじない師だと訴えた人よりは訴えられた人の方が刑務所行きとなっているのが、現実なのだ。

 警察は、まじない師だと訴えられた人が刑務所に入ることについて、「正義感に駆られて暴力を振るおうとする暴徒たちから保護する意味合いもある」との見方を示した。

 現在、ある政府系組織が、被害者、特にまじない師の烙印を押されることの多い女性や子供を守るために、法の見直しを進めているという。

 なお、容疑者の多くがまじない師であることを否定するなか、昨年、まじない師であることを法廷で公言する男性が現れ、国中を驚かせた。(c)AFP/Felix Mponda