【3月31日 AFP】(一部更新)国際原子力機関(IAEA)は30日、福島第1原子力発電所から40キロ離れた福島県飯舘村で測定された放射線レベルがIAEAの安全基準値を超えているとして、状況を再評価するよう日本政府に勧告した。

 政府は、原発から半径20キロ圏内に避難勧告、20~30キロ圏内に屋内退避勧告を出しており、飯舘村はこの外側にあたる。

 IAEAのデニス・フローリー(Denis Flory)事務次長はウィーン(Vienna)で会見し、「あくまでも初期的な評価」だとした上で、飯舘村で測定された放射線レベルは「IAEAの避難基準の1つを超えている」と述べた。また、日本政府に対し「注意深く状況を評価するよう」勧告した。日本政府は「既に評価中だと示唆してきた」という。

 一方でフローリー氏は、IAEAは国家に命令する権限を持っていないこともあり「避難指示圏の拡大を求めているわけではない」と強調した。

 枝野幸男(Yukio Edano)官房長官は31日の記者会見で、IAEAから勧告を受けたことを確認。避難地域の拡大について「ただちにそうした性質のものではない」との認識を示した上で、「長期的に健康に影響する可能性があれば、必要な対応をしたい」と述べた。

■急がれる対応、樹脂散布へ

 日本は現在、福島第1原発の危機を回避する上でジレンマに直面している。原子炉を冷却するには放水が不可欠だが、タービン建屋地下などには高濃度の放射能を含んだ水がたまり、海に流出する瀬戸際にある。そのため修理作業は中断し、環境には深刻な脅威を与えている。

 放射能の拡散を防ぐ応急処置としては、建屋が大きく破損した1、3、4号機にエアフィルター付きの特殊な布をかぶせる案や、タンカーを2号機に横付けして五輪競技用プール数杯分のたまり水を回収する案などが浮上している。

 31日以降、放射性物質の拡散を防ぐための合成樹脂を敷地内に散布する作業を開始する。最終的には、1.2ヘクタールの敷地内の3分の2に散布する予定だ。

 米国は、イラクとアフガニスタンの戦場で性能が立証済みのロボットを日本に貸し出した。これらのロボットは、高濃度の放射能のため人間が立ち入ることのできない原子炉建屋内でも、目的地への移動、撮影、がれきの除去が可能だ。(c)AFP/Shingo Ito