【2月7日 AFP】ヒンズー教寺院遺跡「プレアビヒア(Preah Vihear)」周辺のカンボジアとタイの国境未確定地域で7日、カンボジア軍とタイ軍による戦闘があった。両軍の戦闘は4日連続。これまでの死者は6人に上っており、国連(UN)の潘基文(パン・キムン、Ban Ki-moon)事務総長は両国に「最大限の自制」をするよう呼びかけている。

 カンボジア当局によると、7日の戦闘は、タイ軍部隊が6日の交戦による負傷者の救出作戦を行っている最中に発生した。カンボジア当局は、同国軍の兵士1人が6日夜から7日朝にかけて死亡したと述べ、タイがプレアビヒア周囲の4.6平方キロの地帯を占領しようとしていると非難。一方、タイ側は、7日の交戦について「誤解によるもの」だったとしている。

 潘国連事務総長は同日、衝突について「非常に懸念している」と述べ、両国に「最大限の自制」をして「停戦合意」を結ぶよう呼びかけた。

 両国は5日に一時停戦に合意したものの、6日夜に再び戦闘となり、タイ軍兵士13人が負傷した。一方、カンボジアは6日、プレアビヒア寺院がタイ軍の砲撃で破壊され、建物の一部が「倒壊」したと非難した。

 タイ当局者によると、4日の衝突以降、住民約1万5000人が付近の仮設避難所38か所に避難し、学校23校が7日から9日まで休校になることが決まった。

■背景に国境問題

 王立プノンペン大学(Royal University of Phnom Penh)の歴史学者、ソンボ・マナラ(Sombo Manara)氏は交戦の背景に、両国間に以前からある国境線をめぐる見解の相違があると指摘し、「第三者が介入して両国間の(国境線が)明確に画定されない限り、衝突は終わらないだろう」と語った。

 4日の衝突の直接の引き金は明らかになっていないが、前年12月に議員1人を含むタイ人7人が、国境未確定地域内でカンボジア当局に不法入国容疑で拘束されて以降、両国間の外交摩擦が続いていた。

 拘束されたタイ人のうち2人にスパイ罪で長期の禁錮刑が言い渡されたことを受けて、タイでは強い非難の声があがり、バンコク(Bangkok)ではアピシット・ウェチャチワ(Abhisit Vejjajiva)タイ首相の辞任を求める抗議デモも起きた。

 カンボジアのフン・セン(Hun Sen)首相は、国連安全保障理事会(United Nations Security Council)に対し、「タイの侵略行為」が地域の安定を脅かしているとして緊急会議を要請したほか、両国が加盟する東南アジア諸国連合(ASEAN)の介入も歓迎する意向を示した。

 これを受け、ASEAN議長国のインドネシアの外相が7日にカンボジアを訪問する予定となっていたが、タイ側はASEANの介入は「不要」だとしている。(c)AFP/Suy Se