【11月27日 AFP】ジンバブエでは、最近まで、レストランで食事したあとはレジで大量の札束をバッグから取り出さなければならなかった。食事の時間よりも、札束を数えてもらう時間の方が長くかかっていたものだ。それも、注文できる品があったらの話である。

 ザ・スタンダード(The Standard)紙のダスティ・ミラー(Dusty Miller)氏は、「注文したスープが出てきたらすぐに代金を支払っていたものです。デザートのプリンを待っている間に(スープの値段は)20%も上がってしまいますから」と振り返る。

 だが今は、ハトのコンソメスープからブラジル産牛肉のステーキまで、豊富なメニューから選ぶことができる。しかも、米ドル札を数枚取り出すだけでよい。

 以前は空っぽだったスーパーには今や、ビスコッティ、バゲットなどの舶来品が誇らしげに並んでいる。主食のかゆである「サザ」も売られているし、チョコレート専門店では75のフレーバーから選ぶことができる。

 ムガベ(Robert Mugabe)政権が長らく続いているこの国では、数年間の政治的混乱の末、2008年に経済が破たんし、超インフレに見舞われた。08年7月の国定価格は、牛乳500ミリリットルが600億ジンバブエドル、牛肉1キロが4380億ジンバブエドルもした。食料も燃料も慢性的に不足していた。

 だが08年9月、連立政権が樹立され、09年、米ドルを事実上の自国通貨とする政策が断行された。首都ハラレ(Harare)の食料事情が好転したのは、まさにこの「米ドル化」のおかげである。

■まだまだ残る不安要因

 経済は2年連続で右肩上がりに成長しているが、不安要因もある。国内産業がまだ立ち直っていないこともあり、市場に出回る品物の多くは輸入品だ。人口1200万人の約半数が支援物資に頼らざるをえなかった08年の食糧危機の時よりは状況が良くなっているものの、依然として170万人が食糧支援を必要としている。

 失業率と貧困率も依然として高く、公務員の平均月給もわずか200米ドル(約1万7000円)ほどだ。

 前出のミラー氏は、「しっかりした食事を1日おきに1回ありつけるだけでもラッキーと言えます。全くの悲劇です」と話した。(c)AFP/Justine Gerardy

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