【6月27日 AFP】アフリカの国ザンビア西部の村で26日、この村初めてのテレビが野外に設置され、数百人が南アフリカで行われているサッカーW杯のガーナ対米国戦を楽しんだ。

 れんが造りの家が並ぶ西部州モング(Mongu)県のナムスケケンデ(Namuskekende)村には電気が通っていない。テレビを見たことがある人、ましてやスポーツの国際大会を見たことがある人もほとんどいない。ほかの多くのアフリカの地域と同様、外の世界と村人をつないでいるのはラジオだけで、それも電池があるときに限られていた。

■村で初めてのテレビに数百人

 この村に国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)が、発電機で電力を供給し、衛星から受信した画像を映す3メートル大のスクリーンを設置した。

 日が沈む地平線を背に、試合前のコマーシャルが映ったスクリーンはちらちらと光っていた。「テレビがやって来たのは嬉しい。たくさんの田舎の村がワールドカップを見ることができるね」と17歳のガンブジア・ムタレ(Gambudzia Mutale)君は流ちょうな英語で語る。「多くの人にはこんなイベントを見るチャンスなんてなかったんだ」

 村にはガーナ国旗が1枚だけひるがえっていた。ひとりの村人が、今大会ですっかりおなじみになったブブゼラを吹き鳴らし始めた。辺境の地にあるこの村でこうした応援グッズは贅沢品だ。

 集まった村人たちは、アフリカで唯一グループリーグを勝ち抜けたガーナを一致団結して応援した。17歳のミルドレッド・テブショ(Mildred Thebusho)さんは「わたしはアフリカ人だから、アフリカの国でひとつだけ残っているガーナを応援するわ」と語った。

■「アフリカ人がアメリカをやっつけた」

 ガーナが得点したときには2点とも村に大歓声があがった。泣き叫ぶほどの人もいた。「アフリカ人がアメリカをやっつけた」

 テレビの設置は、エイズや教育といったコミュニティに影響を与えることがらについて報道してもらう若者ジャーナリスト養成キャンペーンの一環だ。彼らによるニュースはインターネットで世界に発信される。

「子どものラジオ基金(Children's Radio Foundation)」のジョージ・ギツマ(George Githuma)さんは「へき地の若者に手を伸ばしたいと思ったら、一番のへき地に行くべきだ。モング県だったらモング市じゃだめで、もっと奥だ。ここみたいにテレビを見ることができないところだ」と語る。

 この基金がユニセフとの協力によって、モング県でこれまで訓練した17人の若者が伝える内容は、おおむね教育や文化、エイズといった自分たちのコミュニティで問題となっていることがらだ。しかし今日は少々、おもむきが違う。

 日も暮れて涼しくなった野外で、柔らかい光を放つテレビを前に村人たちはピッチ上のガーナの選手たちに声援を送る。12歳のアレックス・マシンダ(Alex Masinda)君ははしゃいでいた。「すごいです。ものすごく楽しいです」(c)AFP/Obert Simwanza