【6月8日 AFP】アフリカの小国、レソト王国の首都マセル(Maseru)郊外。埃っぽい空き地では、アマチュアサッカーチームのレソト・スターズ(Lesotho Stars)とノーティ・ボーイズFC(Naughty Boys FC)の選手らが、誰かの携帯電話から流れる音楽に乗せて試合直前のウオーミングアップをしている。

 靴を片方しか履いていない選手もいれば、はだしの選手もいる。ある選手のユニホームは、どうやらポロシャツと下着のパンツという組み合わせのようだ。

 リピート再生でかけられているのは、2010年サッカーW杯南アフリカ大会(2010 World Cup)の非公式応援ソング。しかし、この一大イベントを語る選手たちの表情には、喜びと落胆が入り交じっている。

■隣国民はW杯をテレビ観戦

 W杯の開催国、南アフリカの中に湖のように存在するレソト王国の国民たちの大半は、観光客の増加とそれに伴う経済効果、そしてこの貧困国のサッカーの発展を期待していた。

 しかし、11日の開幕日が迫るいま、レソトがW杯の恩恵にあずかることがないのは明らかだ。南アフリカの他の隣国もまた同じだ。

 レソト・スターズとノーティ・ボーイズの選手らは、試合会場の一つのブルームフォンテーン(Bloemfontein)からわずか2時間の場所にいるにもかかわらず、試合はテレビで見るという。

 選手の一人は「先立つものがないと、自分で見に行くことなんてできないんだ」と嘆いた。

 国際サッカー連盟(Federation Internationale de Football AssociationFIFA)の先月の発表によると、南アフリカ以外のアフリカ大陸内で、W杯のチケットを購入したのはわずか4万人。予想をはるかに下回った。

 南アフリカのマルティナス・ファンスカルクビック(Marthinus Van Schalkwyk)観光相は、FIFAの高額な設定金額と、販売方法がインターネットのみだったことを非難。ネットアクセス事情が悪い大陸でのオンライン販売に異論を唱えた。

 一方、隣国からは、南アフリカの地元団体が、大陸内のファンのニーズに応えていないと非難する向きもある。

 南アフリカの北西に位置するナミビアの法律事務所関係者は「他のスポーツイベントと同じように、家のテレビで見るよ」と語った。

■隣国への経済効果は薄い

 レソトやモザンビーク、ジンバブエの招致活動もむなしく、W杯の代表チームは一組も南アフリカ以外の国で合宿をしていない。また、世界不況の影響もあり、海外からの観光客は当初想定していた45万人に遠くおよばない30万人ほどとなる見通しだ。

 レソトで観光客向けのロッジを経営するTsebo Matsasaさんは、W杯主催者らはもっと隣国をアピールするべきだったと不満を口にする。

「フランスでワールドカップをやったときは、チケットを買うと、周辺の見どころがわかるパッケージがついてきたっていうじゃないか。レソトだって見どころはいろいろある。なぜそれをやらなかったんだ」

「みんなに、南アフリカの中に国があるんだって生まれて初めて知ってもらういい機会だよ。それでW杯後を見据えたプログラムをやれば、いい結果が出ると思う」

(c)AFP/Joshua Howat Berger