【1月19日 AFP】壊滅的な大地震に見舞われたハイチの首都ポルトープランス(Port-au-Prince)は18日現在、数百人の略奪者集団がうろつく街と化している。警戒にあたる警察官や兵士らの姿はまばらで、治安の悪化が懸念される。

 こうした事態をうけて各国首脳は、治安維持のため警察官、軍隊、海軍、国連(UN)治安維持要員の追加派遣を約束した。

 だが、これまでのところ、ハイチの商業中心地ポルトープランスを闊歩(かっぽ)しているのは窃盗者や暴徒らだ。彼らは、商店を次々と物色しては、使用可能な物品を手当たりしだいに持ち去っていく。

 支援物資の配給が滞っていることから、略奪者の一部は食料や飲料を求める被災者たちだ。

 だが、その他の人びとは、無法地帯と化したポルトープランスの通りを、略奪目的でうろついている。彼らは自分で使ったり転売できる物品を探し歩いているのだ。繁華街のある布地店では、状態のよい布地や衣服類が、略奪者集団に強奪された。

■持ち主の目の前で繰り返される略奪

 略奪者が狙うのは商店に限らない。

 ある年配男性は、家財道具をとりに自宅に戻ったところ、家には略奪者が入り込んでいたという。家に入ることもできず、コメやパスタ、牛乳まで、ほとんどすべての所有物を持ち去られたという男性は、悲嘆にくれた様子だった。

 また、別の男性は、略奪者が周りをうろつくなか、妻が営む美容院の倒壊現場で、必死でパスポートと米国のビザを探していた。混乱が続くハイチを離れるためだ。すると、若い男女が近寄り、がれきの中からシャンプーや化粧品が入った箱を見つけ出した。男性は「それは俺のだ!」と声を上げたが、男女は箱を持ったまま逃げ去った。 

■警官の発砲で死者も

 市の中心部では、時折、見回りに来た警官1~2人が、空砲を撃って略奪者を威嚇している。しかし、警察官に対して圧倒的な人数の略奪者は、一時的に退散して再び戻ってくるか、威嚇をものともせずに、略奪行為を続けている。

 こうして略奪行為が拡大するなか、17日にはにスーパーマーケットで略奪行為におよぶ人びとに向けて警察官が発砲し、少なくとも男性1人が頭部を撃たれて死亡した。(c)AFP/Stephane Jourdain