【1月16日 AFP】大地震に見舞われたハイチのポルトープランス(Port-au-Prince)の集団墓地では、5分に1度の間隔で、市内から遺体を運び込む車両が行き来する。

「死に対する全ての尊厳を失った」と、高齢のMezen Dieu Justiさんは、吐き気と涙をこらえながら言葉を絞りだした。

 墓地には遺体が次から次へと運び込まれており、12日にハイチを襲った大地震による死者推計は数万人に達している。

 死者との最後の別れを惜しむ遺族の多くは、抑えきれずに感情をあらわにした。

「これはお父さんなの。大好きなお父さんなの」と、ある若い女性は絶叫し、遺体が山積みになった集団墓地で気を失った。

 また、ある女性は「死人といるほうが落ち着く」と言って、とりつかれたような様子で墓の中に飛び込んだが、やがて周囲の人々に連れ出された。

「わたしたちは感覚を失ってしまった。死が狂気をもたらした」と、親族の遺体を埋葬するために墓地を訪れたある住民は語った。

 教師のフローレンスさん(40)は、「わたしの妹は死後3日、自宅にいた。ようやくここに運んできた。厳粛な葬儀や棺(ひつぎ)、司祭による祝福をしてあげたいという望みは、もうあきらめた」と語った。

 大地震による死者を埋葬するため、ポルトープランスでは少なくとも市内2か所に集団墓地が作られた。ハイチのジャン・マックス・ベルリーブ(Jean-Max Bellerive)首相は、ポルトープランス市内ですでに約1万5000人の遺体が埋葬されたとみられると語った。(c)AFP/Beatriz Lecumberri