【1月15日 AFP】パトリシアさんは幸運だった。ここは出産時の死亡率が極めて高い国、リベリア。初産を迎えた21歳の彼女は、困難なお産で大量の出血があったものの、その後病院に到着し、一命を取り留めることができた。

 彼女が住むリベリア中央部のボン郡では、病院はバルンガ(Gbarnga)に1つあるのみ。出産を迎えた多くの女性たちが、出血多量により、病院に到着する前に死亡している。

 バルンガの保健所で働く助産師によると、女性の85%、特に田舎に住む女性たちは、伝統医の立ち会いのもと自宅で出産を行っている。現代医療への恐れがあり、病院までは歩いて7、8時間、場合によっては数日かかるという背景もある。しかし、伝統医には合併症の知識がないなど、自宅で出産する場合のリスクが認知されていない場合も多い。

 保健省によると、母親が出産時または出産直後に死亡する率は、1989-2003年の内戦以来、全国的に急上昇している。1999年、出産した10万人のうち死亡したのは578人だったが、2007年には同994人にまで増加。出産時の死亡率が高い国のトップ15入りをした。 

■なり手が少ない「助産師」

 国際NPO「世界の医療団(Medecins du Monde)」に所属するフランス人助産師シビル・ジャロー(Sybille Jaloux)さんは、この背景には、訓練を受けた助産師の不足と、自宅出産する女性に対する医療の遅れがあると話す。

 保健省によると、人口350万人の同国で、訓練を受けた助産師の数はわずか400人。少なくとも1600人は必要だと同省は見積もっている。

 だが、ある保健所長の話では、助産師の資格を得るには2年間の訓練が必要で、看護師よりも給料が低いこともあり、希望者は少ないという。 

■輸血や抗生物質で防げる死亡

 出産時の死亡の主な原因は出血多量によるものだ。開発途上国の多くは、輸血によりこれを防いでいるが、リベリアでは輸血もままならない。また、帝王切開を行える病院は、国内では数えるほどしかない。

 さらに自宅出産はしばしば不衛生な環境で行われるため、感染症や敗血症で命を落とす女性も多い。これは抗生物質により防ぐことができるが、ほとんどの場合、伝統医はそうした処置を行わないという。(c)AFP