【9月19日 AFP】米軍の専門家チームは18日、米側のミサイル防衛(MD)東欧配備計画の代替案としてロシアが共同利用を提案しているアゼルバイジャンのガバラ(Gabala)・レーダー基地を視察した。

 米国防総省の代表団は、ロシアが提案する基地共同利用案に回答するための情報収集を行ったと述べた。視察されたガバラ基地は旧ソ連時代に建設された巨大基地で、現在は独立したアゼルバイジャンからロシアが借用している。ロシア側は、米国がチェコへのレーダー基地およびポーランドへの迎撃ミサイル基地配備計画を撤回することを条件に、共同運用を提案している。

■レーダー性能確認が視察目的

 ガバラ基地訪問の目的について、米国防総省ミサイル防衛局のパトリック・オライリー(Patrick O’Reilly)副局長(准将)は、「レーダーの性能を見極め、ロシア側の提案を完全に理解するためだ。公式な交渉や協議は行わなかった。視察の結果は、10月の米ロ高官協議で報告される」と述べた。今回の訪問から最終決定を引き出すのは時期尚早だという見解を示した。

 ロシア宇宙部隊のアレクサンドル・ヤクーシン(Alexander Yakushin)参謀次長(少将)は、米側が協力継続に関心を持っている感触が得られたと語った。一方、米側はロシア軍の専門家を、コロラド(Colorado)州、アラスカ(Alaska)州、カリフォルニア(California)州の米レーダー防衛施設の視察に招くことを明らかにした。

 米国のミサイル防衛東欧配備計画をめぐり、米ロ関係の緊張は高まっている。ロシア政府は、米側が計画を中止しなければ、核ミサイルを再配備すると威嚇するなど強硬姿勢を示していた。

 アゼルバイジャンはイランのすぐ北に位置することから、米国が懸念するイランのミサイル攻撃を想定した場合、欧州の基地よりもガバラ・レーダー基地のほうが実用的だと、ロシアは主張している。

■米国防総省、チェコ基地との連携も検討

 しかし、米国防総省ミサイル防衛局のヘンリー・オベリング(Henry Obering)防衛局長(中将)は同省内で会見し、ガバラ・レーダー基地にはチェコの基地と同等の性能はないとの考えを示した。「ロシアの提案を大変真剣に検討している。しかしロシアの案が、チェコでのわれわれの計画に代わるとは考えられない」と述べ、チェコのレーダーのほうが精確だろうとも付け加えた。その上で、ガバラのレーダーが長距離の監視および探知活動能力に優れていることから、チェコの基地との連携も可能性としてありうると語った。

 ガバラ・レーダー基地はアゼルバイジャンの首都バクー(Baku)の郊外240キロの同国北部山岳地帯にある。16階建ての施設で、旧ソ連のミサイル攻撃早期警戒システムのうち最高水準のレーダー基地のひとつとして、1984年に運用が開始されて以降、首都モスクワの国防および情報機関本部に絶え間なく情報を送り続けている。観測範囲は6000キロで中東、アジア、アフリカの一部と広範囲に及ぶ。

 1991年のソ連崩壊後、2012年までロシアが同基地を借用することにアゼルバイジャン政府は合意した。しかし同国は独立以来、米国との関係強化に力を注いでおり、ロシア側が米へ歩み寄ったともいえる共同利用の提案を歓迎した。(c)AFP/Michael Mainville