【リロングウェ/マラウイ 19日 AFP】米国人歌手のマドンナ(Madonna)がアフリカ南東部の国マラウイから David Bandaちゃんを養子縁組で引き取った件に関し、各国メディアや人権保護団体は反発の姿勢を見せていた。しかしマラウィの人々にとってマドンナは、まさにヒーローのような存在だ。

■「息子のルーツを尊重」するマドンナを大歓迎

 マドンナがDavidちゃんを引き取ったのは約8ヶ月前。今週、Davidちゃんと娘のルルド(Lourdes)ちゃんを連れ、マラウィを再び訪れた。世界のメディアからは、マドンナが養子縁組みの法的手続きを省いたのでは、などの批判があった。しかし地元の人々はマドンナとDavidちゃんの里帰りを大いに歓迎した。

 17日、リロングウェ(Lilongwe)近郊にあるDavidちゃんが暮らしていた孤児院には、故郷に帰ってきた彼を一目見ようと多くの人々が集まった。そのうちの1人、Gloria Yotamuさんは「ロンドンの華やかな暮らしをすぐに押しつけることなく、これほど早くDavidちゃんを故郷に連れて帰ってきたマドンナには感心した」と述べる。さらに「彼女が他にも慈善活動をしていると知っているし、彼を幸せにしたいと願う気持ちが伝わってくる。多くの人々がDavidちゃんはもう戻ってこないと思っていた」という26歳のYotamuさんは4人の子供と首都近郊の非居住者用キャンプで暮らしている。

 マドンナの養子縁組に対して、人権擁護団体やメディアは批判の声を上げた。マドンナは周りの反応に驚きながらも、ピープル(People)誌のインタビューでは、「子供の命を救おうとしている私に、メディアや政府や人権擁護団体が抗議してくるなんて」と、コメント。
 
■孤児のため、親善的な人物が必要

 マラウィにある採石場で働くFunsanani Yakobeさんは、「マドンナのように孤児を助けたがる人がいるならば、そうさせればいいのです。私たちは、自分の生活をも危険にさらしている状態ですから」と述べる。「孤児のために使われるべき資金は一体どこへ消えてしまっているのか」。

 マラウィでは、エイズの蔓延で、多くの人々の命が奪われている。そのせいで、孤児の数は増え続ける一方だ。Davidちゃんの父親はまだ健在だが、母親は2005年9月、Davidちゃんを産んで間もなく息を引き取った。

 マドンナはこの滞在中、政府運営のリハビリセンターを訪れ、ストリートチルドレンや売春婦たちと交流した。その近辺では、マドンナを歓迎する人々が「ようこそマドンナ!批判は気にしないで。私たちはあなたを愛しています!」と書かれたプラカードを掲げていた。マドンナの養子縁組に最初は疑いを抱いていたが、今回の訪問で彼女に対する疑惑が晴れたという人も。

 孤児院Consol Homeの創設者であるAlfred Chapomba氏は、「養子縁組には賛成できない。孤児は同じような文化的・社会的背景を持つ環境で育てられるべきだ」としている。だが同氏は、マドンナの養子縁組はマラウィの認知度を高めたと話す。「世界では、この国の存在を知らない人さえいる。我々にはもっとマドンナのような親善的な人物が必要なのかもしれない」と付け加えた。

 写真は4月17日、養子のDavidちゃん(左)とルルドちゃん(右)と共にマラウイの孤児院「希望の家(Home of Hope)」に姿を現したマドンナ(中央)。(c)AFP/STRINGER