【大宜見/沖縄 22日 AFP】奥島ウシさんは105歳。今もアルコール度数30度の地酒をのみほし、娘たちの手拍子の中、喜んで踊りを披露してくれる。

「長寿村」として知られる沖縄県の大宜見村でも「一番元気なおばあちゃん」といわれるウシさん。その元気な長寿の秘訣を探ろうと、国内だけではなく海外からも、大勢の人がウシさんのもとを訪れるという。

 娘の菊江さん(79)は「母は来客に元気をあげるのが大好きで、来てくださった方たちも、おばあちゃんから元気をもらいに来ましたって言うんです」と語る。

 青い海に面し緑豊かな環境に恵まれた大宜見村は、1987年に健康な高齢者の割合が日本で最も高い地域として「長寿の村日本一」を宣言。さらに世界保健機関(WHO)は1996年、同村を「世界一の長寿地域」として認定した。

  高齢者人口を占める割合が世界一となった日本は、同時に出生率低下による少子化という問題とも戦っている。1月には長寿日本一の皆川ヨ子(よね)さんが114歳の誕生日を迎え、世界最高齢者となった。

 人口約130万人の沖縄県では、100歳以上の高齢者の割合は10万人に55人と、世界最高となっている。中でも大宜味村では、人口約3500人の3分の1を65歳以上の高齢者が占め、うち100歳以上が11人(その大半は女性)という「最長寿村」だ。長期入院している高齢者は1人もいない。老人ホームで生活するのも50人だけで、残る全員が一人暮らし、もしくは家族と同居している。

 ウシさんは「生まれてから一度も病院に言ったことはありません。でもお医者様からは、おしゃべりするだけでもいいから、病院へいらっしゃい、と言います」と語った。

 孫13人、ひ孫23人、やしゃご3人がいるウシさんは、夫が亡くなってから今日まで大家族の家長を務め、毎日を元気に過ごしている。

 「恋多き女」を自認するウシさんは、現在もボーイフレンドを募集中だという。「だからいつも、顔にお粉をはたいて髪に油を塗り、フランス人からもらった香水をふりかけているんですよ」と、ウシさんは手を叩いて笑いながら話した。

 この村に暮らす100歳以上の長寿者たちの中には、残念ながら家族と一緒に暮すことができない人もいるが、皆はつらつとして活動的だ。

 平良マツさん(100)は、沖縄の特産物である黒砂糖の固まりをかじりながら、こう語った。「これまで一度も休日をとったことはありません。今でもです」
 
 大宜味村の島袋義久村長(69)によると、この村の住民の食事は自分たちが作った野菜が中心で、その点が国内のほかの地域の住民と異なるのだという。「この村では、いろいろな種類の野菜や果物が簡単に手に入ります。すぐそばにある自分の畑でとれるんです」

 「不老不死の薬」を発見しようと考える研究者や人類学者、ジャーナリストらにとって、沖縄は昔から魅惑的な研究対象の地域となっている。だが沖縄の住民たちにとって、長寿の秘訣は単純明快だ。要は「バランスの取れた生活」なのだという。

 「それは椅子の4本脚に例えられます。バランスを取るには4本の脚が必要です。つまり、食事、運動、精神状態、社会環境といった要素です」と説明するのは、沖縄県立看護大学講師のクレイグ・ウィルコックス(Craig Willcox)博士だ。

 同博士は「沖縄は、これらの要素がほかに類をみないほどバランスの取れた環境となっています」と話す。この村の100歳以上の住民を調査した結果、食事は野菜や穀物が中心、塩分の摂取量が控えめであることが分かった。さらにストレスに強く、どんな状況でも楽観的に考える傾向があるという。

 第2次世界大戦中に激戦地となった沖縄では20万人近くが死亡し、その大半は一般市民だった。大宜味村でも住民の大半が死亡したという。「戦争で生き延びるためには、精神的にも肉体的にも強くなければならなかったのです」とウィルコックス博士は指摘する。

 写真は、大宜味村の自宅でAFPのインタビューに応じる、105歳の奥島ウシさん(2月28日撮影)。(c)AFP/Mie KOHIYAMA