【ワガドゥグー/ブルキナファソ 4日 AFP】2月24日から今月3日まで、ブルキナファソ(Burkina Faso)の首都ワガドゥグー(Ouagadougou)でアフリカ最大規模の映画の祭典「第20回汎アフリカ映画テレビ祭(Festival Panafrican du Cinema et de la Television de Ouagadougou)」が開催された。見事グランプリに輝いたのはナイジェリア出身の映画監督、ニュートン・アドアカ(Newton Aduaka)氏だ。受賞した作品は、ブラッドダイヤモンド(「流血ダイヤ」とも呼ばれる。内戦が止まないアフリカ諸国、産出するダイヤのことで、戦争のための軍資金として売られるダイヤのこと)と少年兵についての物語で、レオナルド・ディカプリオ(Leonard DiCaprio)主演の映画「ブラッドダイヤモンド(Blood Diamonds)」を思わせる。

■ディカプリオ主演作とは正反対

 ロンドンを拠点として映画制作を行っている同監督は、エドワード・ズウィック(Edward Zwick)監督が手掛けたハリウッド映画「ブラッド・ダイヤモンド」で主役を演じるディカプリオについて、「彼にとっての重要なものは、私にとって大切なものとは全く正反対です。彼はジェームズ・ボンド(James Bond)のようで、いつまででも生き残っていけるでしょう。私が興味を示すのは彼ではありません」とコメントした。

■戦争に巻き込まれた16歳の少年が主人公

 グランプリに輝いた作品「エズラ(Ezra)」の主役は、7歳の時にシエラレオネ(Sierra Leone)の謀反者に誘拐され、少年兵として訓練を受けさせられきた16歳の少年だ。

 舞台はおぞましい内戦で荒廃したシエラレオネ。少年兵として戦い、精神的に傷を負ったエズラは過去を受け入れるため精神的リハビリを受け、国連監視下で開かれた真実和解委員会の証言台に立つ。
委員会に出席したエズラの妹は、戦争中兵士によって舌を裂かれていた。戦争と兵士に深い憎しみを抱えた妹は兄の前で、実の兄(エズラ)が少年部隊に属しており、村に火をつけ、両親を殺戮したことを証言した。

 エズラはその事を思い出せないでいる。その日、謀反指導者は白人の武器密売人とブラッド・ダイヤモンドで取引をし、エズラを含む部下達にアンフェタミン(中枢神経興奮剤)を注射した。それから、村人の腕を切りおとせと命令した。敵対していた政治陣営に投票できないようにするためだ。

■サンダンス映画祭でも絶賛

 先月米国で開かれたサンダンス映画祭(Sundance Film Festival)では、同作品上映後、鳴りやまない拍手とともに観客の絶賛を受けた。

 41歳のアドアカ監督は、「この映画を通して戦争について語りたかったのです。誰がどのようにして戦っているのかを知ってもらいたかったのです」と語る。同監督自身も子供時代に、1960年のビアフラ(Biafra 現在のナイジェリア連邦共和国)内戦を体験している。「この戦争で初めて『飢餓』というものが武器にされ、100万人以上の人々が命を落としました。今となっては誰もこの戦争について話しません。それでもこれは最近の話で、人々は忘れているわけではないのです」と同氏は付け加えた。

 同監督はビアフラ内戦の勃発後、1970年に両親と共に同国内の都市ラゴス(Lagos)へ移り住んだ。その後18歳で学業の為、英国に渡った。内戦からは逃れたものの恐ろしい記憶は消えず、今でも砲撃の音と逃げまどう人々の叫び声が頭から離れないという。

■戦争がもたらす影響伝えたかった

 「停戦は戦争の終わりを意味しないという事を伝えたかったのです。心の傷跡はいつまでも残ります。この作品は何が良いか悪いかについてではなく、戦争がもたらす影響について語ったものです。映画祭向けでも芸術的でもない映画ですが、何か少しでも役に立てばと思います。これは地球上の誰もに関わる事ですから」と語る同氏の作品「エズラ」は、同じく賞を受けた「レイジ(Rage)」に続く2度目の受賞となった。

 また、アドアカ監督はナイジェリアで制作された少年兵に関する映画作品についての研究を行っている。

 映画の中で少年達を利用する謀反指導者は、正義のために戦っていると信じている。これについてアドアカ監督は「正当な理由でも、悪いことはできます」と語る。
「しかし利用された少年兵達は、精神的に立ち直るのに何年もリハビリを受けなければなりません。人々は傷つき、傭兵として参加することで皮肉なことにさらなる戦争に貢献してしまっているのです」付け加えた。

写真は、Etalon d’Or de Yennengaトロフィーを手にするAduaka監督。(c)AFP/ISSOUF SANOGO